株式会社インターナショナルブリッジ IB早稲田ラーニングセンター (International Bridge WASEDA Learning Center)
日本本社:http://www.ib-waseda.com/index.html
中国上海校: http://www.ib-waseda.com/school/china/shanghai/index.html
海外事業部部長 小山卓氏
「夢・感動・人間力――教育理念」
<今回の企業> 上海市への進出日系企業数は2007年末で6,844社。それに伴い、上海にある日本人学校の児童生徒数は約2,600名に達した。こうした上海在留邦人数の増加を背景に、学習塾などの必要性が高まってきている。「株式会社インターナショナルブリッジ IB早稲田ラーニングセンター」は中国蘇州にて第一校目となる蘇州校を立ち上げた。20年以上に渡って塾部門や英会話学校など日本国内外で、帰国子女の悩みに対応してきた実績を持っている。今回、海外教育業界の現場に携わってきた海外事業部部長 小山卓氏に秘められた教育現場の実態を伺った。
―きっかけは投げかけと疑問
東京で生まれ、横浜で高校・大学生活を過ごした小山氏。将来は小説家もしくは心理カウンセラーになりたいと高校時代に真剣に考えたものの、「理工系でないと大学には行かせない」と父親が大反対したため、早稲田大学では理工学部で化学(chemistry)を専攻する。卒業後、外資系企業「東レ・ダウユーニング」に就職し、研究開発部門にて10年間、その内3年間をアメリカ、ミシガン州にて勤務。「32歳の時、自分の将来が見えてきたんです。10年後の自分が見えてしまった」と語る小山氏に、転職の誘いが舞い込んだのだった。それも、「営業だけは絶対やらない」と頑固と拒絶していた外資系保険会社の営業――「自分に何ができるのだろう」と考え続け、今までいた職場とは180度違う業界にあえて飛び込んでみたい、その思いが転職を決定付けた。しかし、保険会社の裏表加減に疑問を抱き、1年後退職。その後、教育業界への再就職を決め、まる二ヶ月どこにも再就職せず、日雇いの肉体労働をしながら就職活動を行った。今から6年前の話である。
これまで子供を持つ父親として頻繁に学習塾などに顔を出し、PTA活動でも副会長・会長を務め、また以前勤めていた会社で新入社員への教育係を担当していたこともあり、「教育ってこのままでいいのだろうか」と教育業界の将来を憂慮していた小山氏。そして、大学受験対策の学習塾に再就職した2年後、「IB早稲田ラーニングセンター」から海外に開校する学習塾の責任者をしないかとの誘いを受ける。ここから中国での赴任生活が始まった。
―「あの頃が一番楽しかった」――蘇州校立ち上げ
中国蘇州の赴任まで準備期間は1ヶ月足らず。現・蘇州校室長と2人で中国へ渡ったものの、本社から用意されたものは教室と住む場所のみ。官公庁(注1)に提出する申請書類の作成を始め、家具買出しなど何もかもが手探り状態からのスタート。毎日官公庁へ通う日々が続いた。「日本の塾と同じ感覚でやってくれ」と本社から通達されていたが、赴任前に渡されていた資料と現場で得た情報は全く違い、驚きを隠せなかったという。「当時、塾の対象となる中学生は片手で数えるほどしかいなくて、年齢層が相当低かったんです。日本の学習塾で行っているカリキュラムでは通用しない。急遽、インターナショナル・スクール(注2)に通う児童向けに国語(日本語)から教えるカリキュラムを作成しました。ある意味、日本のカリキュラムを全く無視しました(笑)。でも逆に言えば、自分たちの思うもの、理想とするものをつくることができました」。蘇州に渡り約一ヵ月後、中国大陸第一校目、蘇州校が正式開校となった。「我々の教育理念に共感してくれ、税務省から官公庁まで自分から働きかけてくれた現蘇州校勤務会計担当の中国人の方にも大変感謝しています。あの頃は忙しかったが一番充実していた」と蘇州校立ち上げの思い出を笑顔で振り返る小山氏がいた。その半年後、上海古北地区に中国大陸第二校目の上海校が開校した。
注1:中国の国家機構(中国語で行政機関、または政府機関と公共団体機関)
注2:International school 上海に7校開校(2008年6月現在)
(上海シンガポール国際学校、上海リビングストンアメリカンスクール、ダルビッチ国際学校上海、上海アメリカンスクール(SAS)、耀中上海国際学校(SIS)などなど)
以下「インター」と表記。
―独資できない教育事業のカラクリ
上海校は蘇州校と違いオーナーが中国人である。その理由として、教育事業である学習塾は独資(注3)で開校できないためである。では、どうして蘇州校は独資で開校できたのか。「タイミングが良かったんだろうねぇ」と笑いながら開校当時を振り返る小山氏。「日本企業を誘致するためには日本の教育産業は必要不可欠である。」と江蘇省上層部の役人の発言に後押しされ、日本人向けの教育事業であれば良いとの許可がおりたのである。このようなカラクリにより、中国大陸第一校目は上海ではなく蘇州で開校する形となった。
注3:日本等外国企業が中国に現地子会社を設立する際に、中国側と組むことなく、100%自らが出資を行う形で進出する形態。中国側のパートナーも出資する場合、「合資」形態と言う。
―“ゆとり教育”と“つめこみ教育”とのバランス
「上海にいる子達たちは言葉使い、大人に対しての挨拶がきちんとできて、とても素直だという印象を受けます。教育熱心な家庭が多いですし、しつけもしっかりしています」そう語る小山氏。「日本の“ゆとり教育”も元々はアメリカやヨーロッパ式の『自分で考えて答えを作りだしていく』という教育方針を目指したはずです。しかし、授業数を減らすだけで子ども達の遊ぶ時間がただ増えてしまったことが“ゆとり教育”の失敗だといわれています。」と日本のゆとり教育に対して残念に思う気持ちがあるようだ。
そして、“良いとこ取りすればいいのに”と付け加える小山氏の理由はこうである。まず、“つめこみ教育”を受ける日本人学校に通う生徒と“考える教育”を受けるインターの生徒を比較してみる。前者は、少し難しい計算式の問題を見た瞬間、「分からない!」と言い放ち、考えようとする姿勢さえ見られないことが多い。一方、後者は繰り返しの作業を嫌う代わりに、難しい問題を何とか解こうとする傾向にあるという。国語力がないインター生徒でも、前者が解けない文章問題をさらっと解いてしまう。それは『考えて解く』というプロセスが身についているからである。どちらに偏りができてしまっても駄目、バランスが大切なのである。
―「他では絶対できない自信がある」――他校との差別化
上海在留邦人数の増加に伴い、教育事業の需要が高まる上海市は他7校ある学習塾の激戦区と化している。他校との差別化を図るために同学習塾では「個別指導――オーダーメイド」で上海教育業界を先回りする。その背景に、海外で生活する在留邦人の子供達は出国した時期も違えば、帰国する時期、それまで滞在していた国、滞在地で受けた教育から、これから行く先々の国、場所などバックグラウンドはさまざまである。「同じ学年、同じクラス、同じような成績の生徒でも授業のカリキュラムが全く違います。生徒一人ひとりによって、今本当に必要なこと、やるべきことは違うのです。そこまで対応しているのは我が校だけです!」と熱く語る。「塾は実績があってこそだ!」というキャッチコピーで受講者を増やし、そのために生徒を利用する塾も少なくない。しかし、同学習塾はあくまで「教育理念――夢、感動、人間力」を教えることをモットーとする。商業主義化する学習塾業界の真っ只中、「せっかく作るからには今までにない学習塾を作ろう」という思いから『完全オーダーメイド』というコンセプトが生まれた。
一見、海外で生活する邦人の子供達は現地の語学を学べる、羨ましい環境にいるように思われがちだが、その反面、母国語(日本語)力などの教育が不十分だという不安や悩みがまとわりつく。『完全オーダーメイド』とは、こういった不安を抱え、進路選択での悩み、学校での勉強について悩む保護者に対応して、カウンセリングを行い、その生徒に合った最適な個別プログラムを作成する。「例えば、英会話を受講させたいとお越しになられた保護者の方でも、実は潜在的な要求があります。ここで“言葉の力”がベースだとよく言うんです。母国語力がないから問題が解けないという根本的な原因が見えてきます。母国語の基礎が出来ている人ほど外国語の習得は早いものです。英会話や算数を受講するつもりが、国語(日本語)を受講する形になる生徒さんは沢山いらっしゃいます」
<次号に続く>
株式会社インターナショナルブリッジ IB早稲田ラーニングセンター (International Bridge WASEDA Learning Center)
日本本社:http://www.ib-waseda.com/index.html
中国上海校: http://www.ib-waseda.com/school/china/shanghai/index.html
海外事業部部長 小山卓氏
住所:上海市長寧区新潮路29号
連絡先:(021)62681877
Fax:(021)62681877
インタビュアー:浜田あゆみ
執筆:浜田あゆみ、松村伸幸
同行:中原周一、吉田めぐみ
校正担当:丸山由貴
<お知らせ>
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